株式会社ロスゼロ
更新日:2025.05.26
もったいないに、新しい命を。
食品ロスを、笑顔の循環へと変える挑戦
ロスゼロは、「もったいないを、価値あるものに。」を合言葉に、食品ロスの削減を起点にした循環型ビジネスを展開しています。2018年に創業して以来、社会課題の解決と事業性の両立を目指し、今では全国の企業や自治体と連携した多面的な活動へと広がっています。
現在の主な取り組みは以下の通りです。
(1)ロスゼロ不定期便(Subscription)

食品ロスの発生には、「予測できない」「量がまちまち」といった特徴があります。だからこそ、その“あいまいさ”をポジティブに活かしたのが「ロスゼロ不定期便」です。内容や配送日をロスゼロに一任する「ワクワク福袋型」の不定期便を設計しました。どんな商品が届くかはお楽しみ。メーカー側のブランド毀損を避けつつ、クローズドに活かせるメリットがあり、消費者側には“楽しくて意味のある購買体験”を提供しています。
届いた食品にはそれぞれ「なぜロスになったのか」のストーリーが添えられています。食べ手がそれを知り、「楽しみながら、社会にも貢献したい」と思いながら食べる、その循環が毎月生まれています。ひと月で削減できる食品ロスは5トン~7トンです。
(2)Eコマースと会員限定販売(EC)
オンラインストアでは、会員限定で規格外・過剰在庫の食品を販売しています。ただし、メーカーのブランド棄損を避けるため、安く売るだけではなくその食品がなぜ行き場を失ったのか、誰が作ったのか、どんな思いが込められているのか——そうした“背景”を「ストーリー」とセットで伝えることを大切にしています。それらを知ることで、消費者はより深い納得感をもって選び、食べ終えたときに「意味のある買い物だった」と感じる食べ手が増えるような販売が心掛けられています。食品の単価が高く上質な食品が集まっているのも特徴です。商品の本質的な良さを伝えれば激安で販売せずに済み、新しい経済に寄与できています。
(3)アップサイクルブランド「Re:You」

製造過程で使われなかった原料や副産物を活用して命を吹き込む。そんな想いから生まれたのが、オリジナルのスイーツや加工品を開発するアップサイクルブランド「Re:You」です。「食べる“りゆう”がある」、という意味だけではなく、環境の3Rを意識できるブランド名になっています。

商品例としては、規格外の農作物や、製造過程で使われなかった食材を使いスイーツを開発。ふるさと納税返礼品としても登録され、地方創生の一助にもなっています。たとえば被災地からの復興を目指す気仙沼の農家で発生した規格外のいちごを活用し、復興支援を行うNPOや地元のデザイナー・JTBなど、多くの仲間と共創し、展開しています。農家の売上支援を行うことで復興支援にもつながっています。
(4)CO2削減の“見える化”と脱炭素型の売場づくり
食品廃棄には、輸送・保管・焼却に伴うCO2排出が大きく関わっています。食品ロスの削減は、脱炭素社会の実現と直結していることを、より多くの人に伝え、行動につなげるアプローチを強化しています。百貨店や大学生協などでは、ロスゼロの商品に「CO2削減量」を表示するデジタルサイネージを設置する場合もあります。買い物を通じて「自分が社会にどんな影響を与えられるのか」が“目で見てわかる”仕掛けになっています。
環境問題は大きなテーマですが、日々の選択のなかで実感できれば、もっと前向きに関われる。ロスゼロは、そんな“気づきの場”をつくる役割を担っているのです。
(5)自治体・教育機関・地域・大企業との連携・啓発

食品ロスは、個人だけでなく地域全体で向き合うべき課題です。ロスゼロはこれまでに大学・企業でのセミナーや研修活動も実施してきました。これまでに制作・発信した食品ロス・環境関連コンテンツは1000本以上にものぼります。次世代を担うZ世代や子どもたちに「もったいない」や「循環」の価値を伝える教育にも力を入れています。
また、川西市・豊中市・東大阪市・大阪府などと連携協定を締結し、子ども食堂への食品提供や市民向けの啓発イベントなどを実施してきました。その他、脱炭素社会の実現を目指す、多くの大企業との協業を積極に行っています。
代表の文美月さんは、ロスゼロを2001年に起業。第一子の出産を機に“自宅からできる仕事”としてECビジネスを始めました。450万点のヘアアクセサリーをECで販売し、2010年から2018年にかけて、ユーズドのヘアアクセサリーを国内で回収し、約4万点をカンボジア、ラオスなど10カ国以上の女性や子どもたちに届ける活動を展開していました。
この取り組みは単なるモノの寄贈ではなく、現地でヘアアクセサリーを販売し、その売り上げを職業訓練校に寄付する形になりました。不要になった日本のアクセサリーが、海外の誰かの笑顔につながる、 “役目を終えたはずのモノ”が再び命を吹き込まれる、ボランティアではなく持続可能な企業の仕組みにするべきだ、など、多くのことを学びました。そんな折、食品業界にも同じように「まだ食べられるのに捨てられてしまう」食品が大量に存在することを知り、大きな衝撃を受けました。その背景には、流通の慣習や規格の厳しさ、そして「見た目や日付」が重視される傾向みがあると気づいたのです。
そしてこの実体験が、 “食”というより本質的かつ日常的なテーマであり、世界的な社会課題となっている食品ロス問題において、これまでの経験を活かしてビジネスとして成り立たせながら新しい循環を生み出すロスゼロ設立につながりました。もったいないものを活かす橋渡しをしたい。その根底にあるものは、一社目のビジネスと共通しています。
最初に起業した会社のECやD2Cのノウハウを活かしながら、単なるモノのやりとりを超えて、「ストーリーを伝える」「想いをつなぐ」仕組みを構築。それが今の原動力になっています。
担当者は、『ロスゼロの活動を通して実感しているのは、消費者のみなさんが「ただ食べる」だけでなく、「想いに共感して選ぶ」という、新しい買い物のスタイルを育ててくださっていることです。賞味期限や味に問題がないにも関わらず行き場を失っていた食品が、今では「背景にある物語が素敵」「自分が食べることで救える」と、前向きに手に取られるようになりました。単なる「モノの売買」ではなく、食べることがそのまま社会への優しさにつながる—そんなやさしい循環を感じられることは、私たちにとっても大きな励みです。』と話します。
担当者は、『最初は数社だった協力企業も、今では保険会社、電力会社、百貨店、電鉄会社、大学、自治体などに広がりました。特に印象深いのは、東京海上日動火災会社と構築した食品ロス削減コンソーシアム。実証実験を経て、2024年秋に東京海上日動火災から「食品ロス削減推進保険特約」が販売されました。』とも振り返ります。
担当者はさらに、『取引先の企業からは「社内でロスゼロの取り組みを紹介したら、従業員の食品ロスへの意識が変わった」といった声もいただきました。社員研修や福利厚生の一環としてロスゼロの商品を導入してくださる企業も増えています。また、自治体や学校からは「地域の子どもたちに伝える授業を一緒にしたい」「市民向けにイベントを開きたい」といったご相談も多く、ロスゼロの活動が“暮らしの中にある気づき”として根付いてきているのを感じます。』と話します。
担当者は、今後取り組んでいきたいこととして、
『ロスゼロは、食品ロスという“もったいない”を、「誰かが損する問題」ではなく、「みんなで解決できるチャンス」として捉え直しています。アップサイクルについては、食材から食品だけにとどまらず、食材から繊維や資材などの「異素材」にも挑戦しています。“もったいない”の可能性を、もっとおもしろく、もっと広く、社会に広げていけたらと考えています。「食品ロスを削減する」という表現と「もったいないものを活かす」という表現は、似て非なるものです。資源が限られる日本において、資源循環社会の実現が求められています。その一端を担えるようになっていくつもりです。』
『「この商品を買うと、CO2がどれだけ減るか」——ロスゼロでは、そんな“見える化”を進めています。百貨店や社員食堂などでの導入が進んでおり、商品横に掲示されるデジタルサイネージには、削減できたCO2量がリアルタイムで表示されます。買い物がそのまま、脱炭素社会の一歩につながる。そんな実感を、もっと多くの人に届けていきたいと考えています。』
『これまでも大企業とのオープンイノベーションが少なくないロスゼロですが、脱炭素・サステナブル分野での協業の可能性はこれからも広がっていきます。これまでも保険会社や電力会社など、一見食品ロスとの関りが少ない業種と関わってきました。このように、食品業界を超えた取り組みをしていきたいと思います。』
『ロスゼロはこれまでにも、川西市・豊中市・東大阪市などと連携し、子ども食堂への支援やコロナ禍での医療従事者への食品寄贈などで地域支援を行ってきました。これからもより広くの自治体と取り組み、「地域の“もったいない”を、地域の“価値”に変える」。そんな取り組みを、全国へ広げていきたいと考えています。』
と締めくくりました。